この春「Spring Camp 2022」が実施されました。そのプロジェクトのスタッフを務める中山知則さん・江良岬さんに、YTJ合宿の魅力について聞いてみました。
ーまず、かんたんなプロフィールを教えてください。
(中山さん)
中山知則です。YTJには2016年にスタッフとして入りました。高校生の頃はダンスに励み、これまでヒップホップを中心に踊ってきて、オーディションを受けたり、バックダンサーや振付家をしたりと、ダンスの活動をしていました。ベトナム人のダンサー育成をしていた際に、子どものダンス育成がもっとできないだろうか、と思っていたところ、ちょうど元YTJのスタッフに声をかけられ、スタッフとなりました。
(江良さん)
江良岬です。わたしは元YTJのメンバーで一期生でした。小学校4年生から7年間メンバーとして活躍し、当時はニューヨーク公演にも行きました。高校と大学でもダンスに励み、主に創作ダンスを中心に活動。世界大会にも出場して、ダンスをもっと広めたいという思いから、YTJにスタッフとして戻ってきました。ダンスなどを通じて子どもの成長の手伝いができたらと思い、教員免許を取得しています。
ーSpring Camp 2022とはどんなものですか?
(中山さん)
YTJのメンバーが参加するイベントの1つで、公演のクオリティの向上を目的にしています。Spring Campへは小学校2年生のメンバーから参加ができます。低学年のメンバーは2泊3日で、それ以外のメンバーは3泊4日です。合宿と強化練習会があり、合宿はその名のとおり、宿泊を伴うものです。強化練習会はスタジオで開催しており、通常のレッスン時間よりも長く、集中的に練習を積むものです。年に2回、春と夏に開催しています。
ー感染症拡大が懸念されるなかでの開催は、苦労があったかと思います。実際に大変だったことはあります
か?
(中山さん)
メンバーたちを保護者からお預かりするということは、命を預かることなので、感染症対策は徹底しました。マスク着用や消毒などのルールの制定もそうですが、合宿所のガイドラインの順守などをして、メンバーや保護者が安心できるように努めました。
ーSpring Camp 2022でなにか新しい試みはしましたか?
(中山さん)
はい、ありました!これまでは、公演ごとに合宿をしていたのです。wordplay、WORLD MUSIC、ALICE IN Wonderlandと、公演によって分けて合宿をしていたのですが、今回は、「スタジオの縦割り(各スタジオごとに合宿先を割り振る)」を採用したのです。
ースタジオの縦割りとは、どのようなものでしょうか。
(中山さん)
YTJのスタジオには、さまざまな年齢のメンバーが所属しています。このスタジオ単位で合宿を実施するため、合宿には小学校2年生の幼いメンバーから、中学生のお姉さん・お兄さんメンバーまで一緒になって寝食を共にすることになります。
ースタジオの縦割りにして、メンバーたちの様子はどうでしたか?通年の合宿と変化はありましたか?
(江良さん)
積極的にリーダーシップを発揮するメンバーがいました。わたしが特に印象的だったのは京都TS1(特別選抜)のメンバーたちです。合宿の際にスタッフの声が枯れていることに気が付くと、変わりに声を出してくれるシーンがあったんです。「みんな、聞いて」など率先して声かけをして、周囲のメンバーだけでなく、スタッフにまで気配りしてくれていたのが強く記憶に残っています。今回はスタジオの縦割りだったため、年上のメンバーたちはそれを自覚し、積極的にリーダーシップを発揮してくれたのだと感じました。
ーSpring Camp 2022の参加率はどれくらいなのでしょうか?
(中山さん)
一般的な習い事の合宿と比べて参加率は高いと言えます。感染症の拡大前は、選抜に所属しているメンバーの参加率は90%ほど。ここ数年はどうしても感染症の影響があり75%ほどです。基礎クラスにいるメンバーの場合は、25%ほどが参加しています。任意参加のイベントなので別途料金が発生しますが、積極的に自分から「合宿に行きたい!」と言うメンバーが多いのが、YTJの合宿の特徴と言えます。
ーSpring Camp 2022では「レクリエーション」があると聞きましたが、具体的にどのようなことをしたのでしょうか。
(中山さん)
部屋ごとに発表会をやりました。演目テーマは完全に自由です。演目はメンバーたちに考えてもらうようにしました。空き時間を見つけて、相談し合いながら練習をし、合
宿最終日に発表をして、審査をします。上位に入ればプレゼントがあるという、楽しいイベントです。今回はスタジオ縦割りだったため、幅広い年齢のメンバーたちが1つの演目を作り上げました。自然と年上のメンバーたちは、統率力を見せてくれて、チームワークやコミュニケーション力が向上したと思います。
ーJYDFコラボ企画WSとはなんですか。
(中山さん)
合宿を合宿だけで終わらせるのではなく、JYDF(Japan Youth Dance Festival)とつなげる試みをしています。合宿の施設ごとにコンテストを開催していて、みんなに投票してもらうのです。この投票はウェブで受け付けていて、合宿に参加していないメンバーも投票することが可能です。ダンスが上手なグループが上位になるとは限りません。笑顔で楽しそうにパフォーマンスをしているか、キラキラと輝いているかも重視されているのが特徴です。
ーSpring Camp 2022に参加することで、普段のレッスンでは出会わないメンバーと一緒に過ごすことになったかと思います。メンバーの様子(特に内面)に変化はありましたか。
(江良さん)
YTJでは、さまざまなイベントがあり、他のスタジオのメンバーたちのダンスや歌を見る機会があります。その際に「あ、合宿で一緒だった子だ」と思うことがあるんです。他のスタジオのメンバーは、ライバルではなく、仲間という意識が芽生え、自然と他のスタジオグループを応援するようになりました。合宿を通じて、視野が広くなり、「自分だけじゃない」と思えるようになってきたと感じます。
(中山さん)
メンバーだけでなく、わたしたちスタッフ同士も出会いがありました。他のスタジオのスタッフと連携や、意見交換することで、スタッフ同士もより強いパートナーシップが築けたと思います。
ーSpring Camp 2022には、幅広い年齢のメンバーが参加しますが、家族から離れることでナーバスになったメンバーもいたかと思います。実際スタッフとしてどのような対応をしましたか。
(江良さん)
はい、どうしても低学年メンバーの場合は、家族と離れて宿泊することに不安を感じることがあります。必要に応じて、一緒に寝ました。保護者の方に、夜メンバーに電話してもらい「大丈夫だよ」と安心できるように工夫することも。ぬいぐるみを持ってくる子もいます。でも、最初はナーバスでも、合宿の帰りはガラッと印象が変わる子も少なくはありません。
ー合宿の帰りに変わるのですか!具体的に合宿前と合宿後でどのような変化がありましたか。
(中山さん)
メンバーの帰りの様子を見たときは本当に「合宿をやってよかったな」と心から感じるときです。というのは、後ろ姿がすごく頼もしくなっているのですよね。あと、「楽しかった」、「合宿に参加してよかった」という声を聞くと、とても嬉しくなります。帰りのバスの座席にも変化があります。行きのバスでは、いつもの仲良しメンバーでまとまって座っていても、合宿を通じて新しい友だちができるので、帰りの座席も変わっていることが多いです。
(江良さん)
わたしも合宿の帰りにメンバーを見ると、「やってよかったな」とすごく感じます。合宿をするということは、命をお預かりすることなので、準備はとても大変です。しかし、帰りの楽しそうな様子を見ると、苦労がふっとぶような感覚です。スキル面も向上していて、ステップなどダンス技ができていたり、向上していたりすると、合宿の効果を感じます。
ー合宿ならではのエピソードはなにかありますか?あれば教えてください。
(中山さん)
パンツがなくなる、というのは毎年恒例行事という感じですね笑。男の子のメンバーの場合は、合宿が嬉しくてテンションが上がるようで、まとめるのは大変なこともあります。過去には、枕投げをやってふすまを破ってしまったなんてことも…。今では笑い話です。他にも、台風が来て合宿所から帰れないということがありました。メンバーは下着を宿泊日数分しか持ってきていないので、スタッフが手分けをして洗濯したことは、今ではいい思い出です。
(江良さん)
虫がでることも、ほぼ毎回ありますね。「江良さん!虫出たー!」とメンバーが大騒ぎ。でも、不思議と虫が平気なメンバーがひとりはいつもいるのです。頼もしく対処してくれて、助かっています。 あと、お腹が痛くなったメンバーがいて、わたしの部屋に他のメンバーが知らせに来てくれましたが、こちらは爆睡中。全然ノックに気が付きませんでした。翌日、くわしく事情を聞いたところ、ノックをすごく小さな音でしていたことがわかりました。「起こしたら悪いな、でも知らせなくちゃ」と複雑な気持ちだったみたい…。
「次からはもっと大きくノックしてね」と伝えました。
ーSpring Camp2022を終えて、メンバーにはなにかしら変化があったと思いますが、保護者から言われて嬉しかったことはありますか。
(中山さん)
やはりメンタル面の変化は大きいです。わたしが特に印象的なことは、あるメンバーの保護者から「合宿でなにをしたのですか?」と言われたことです。そのメンバーは、ひとりでは寝られず、いつも保護者と寝ていたそうです。しかし、合宿から帰ってきて、ひとりで寝るようになったとのこと。保護者が驚いて、家で聞いてみたところ「みんなもうひとりで寝ているんだよ」と言ったそうです。この保護者からはとても感謝され、嬉しい気持ちになりました。
(江良さん)
保護者からは、「笑顔で帰ってきてくれただけでよかった」と言われることが多いです。合宿を終えた子は、充実感から笑顔なことが多いので、こうお声がけしていただきます。他には、自宅で率先して掃除をするようになった、洗濯をたたむようになった、ベッドメイキングをするようになった、など生活面での変化を保護者から報告されます。「ゆっくりできた」と感謝されることもありました。
Spring Camp 2022は、スキル面だけでなく、メンタル面の向上にもつながるのですね。メンバーだけでなく、YTJのスタッフにとっても充実した経験だったことがよく伝わってきました。中山さん、江良さん、どうもありがとうございました。